水口囃子は、神前に於て奏される神前の曲と、曳山鉾が行進中に囃される行進の曲の2曲より構成されて居ります。

神前の曲は、｢額(ｶﾞｸ)｣と｢大蛇(ｵﾛﾁ)｣の2曲があり、曳山所有町の伝統によって上記の2曲の中1曲が奏せられます。この曲は神様に献る曲ですから、自ずから荘重にして厳粛、聞く者をして襟を正さしめるものです。 ｢大蛇｣は名の示す通り、始め荘重にして、次第に重みを増し、恰も雲を得た龍が天に昇るが如き活気を帯びた曲です。

行進の曲は｢馬鹿囃(ﾊﾞｶﾊﾞﾔｼ)｣｢大馬(ｵｵﾏ)｣｢八妙(ﾔﾀｲ)｣の3曲よりなり、｢馬鹿囃｣は曳山鉾が平坦地を徐々に行進する折の曲です。｢大馬｣は曳山が四角又は下り坂等にさしかかった場合に、方向を変えたり最徐行する折の曲であり、周囲の気分を和らげ注意を喚起するための曲です。｢八妙｣は曳山が上り坂に来た折、又神社の参道並木等に於て行ないます。最も力のこもった勇荘活発な曲です。

これの曲に用いる大太鼓(1)、小太鼓(2)、鉦(2)、横笛(3)の8つの楽器が、文字どおり8つの妙なる調べを発揮しつつ互いに攻め合いながらそのわざを競う最も華やかな曲で、折からの参道の桜吹雪と相呼応して、参拝者をして祭気分を満喫せしめ、自ずから神人合一、神人和楽の境地に至らしめ、手のまい足の踏む所を知らざらしめる曲で、水口囃子の圧巻です。

水口囃子は祇園囃子や大津四宮囃子の如きゆるやかな上方囃子と異なり、ジャズ調ありマンボ調あり極めて野性的庶民的な近代的音曲をもった囃子です。

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